「なぜ日本人は外国語を習得するのは苦手なのか」という問題について、以前僕はこれまで「これって、英会話学校の需要を喚起するための策略じゃないのか」程度に思っていました。でも最近、日本人が外国語を習得するのが苦手な理由がここのところにあるのではないかなと考えています。
その理由とは・・・
「日本人は頭の回転が遅いから」
なのだと思っています。
いきなりこんなことを言っても面喰らうでしょうから、順を追って説明しましょう。
言語とはある概念をある一定のルールに従うことで、他人とその概念を共有、伝達する手段です。例を上げると、「書斎にある大体の場合は四つの足があり、物を書いたりするためにつかわれる台」を概念とすると、これを英語では「desk」、日本語では「机」スペイン語では「mesa」ということになるわけです。
ちなみに概念を想起するスピードは各民族によって大差はないと思われます。机の絵を見えて日本人に「机」と「椅子」のどちらかのボタンを押させる、アメリカ人には「Desk」と「Chair」のボタンを押させるという実験をした場合にほとんど両者間に差はないでしょう。
さて、ここでもどって、3つの言語を比較すると英語は一音節、日本語は三音節、スペイン語は二本節を費やして、同じ概念を表現しています。これを仮に時間に置き直すと英語が0.04秒で表現可能だとすると日本語では0.12秒、スペイン語では0.08秒を要することになるとも考えられます。
これは一つの単語の例ですが、文章になるともっとこの差がでてきます。たとえば、「I love you」は三音節で表現できます。ところが日本語だとどうでしょうか。「愛してる」だけでも5音節も使っているのに、これだけでは「だれがだれを」という情報が完全に欠落しています。その情報を補填するのには、さらに多くの音を必要とするのです。
逆から言うと、ある概念を表現するのに日本語はダラダラ時間をかけてもいい言語であるということになるわけです。
さて、ここで一つの実験結果があります。実験にはPANASONIC社のICレコーダに付属しているVoice Editing というソフトを使用しました。
このソフトにはテキストを読み上げるという機能がついていて、日本語、英語、中国語、韓国語、ロシア語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語が対応しています。
さて、このソフトを使って2009年1月20日にホワイトハウスで行われたオバマ大統領の就任演説を読ませて、実際に話すのにかかる時間を計測しました。
なお、この演説は国連公用語6カ国語(英語、フランス語、スペイン語、中国語、ロシア語、アラビア語)で翻訳されたものが公開されていますし、日本語の翻訳も入手しました。これらはすべて権威のある場所で公開されているため、個人が勝手に翻訳したものではなく高品質の翻訳がなされたものと仮定します。
さて、実際の演説は間をながめにとってい話しているために18分58秒とかなり長い時間をかけています。実際に英語に親しんでいる人にはかなりゆっくり聞こえているのではないかと思います。
ところでこれをVoice Editingにテキストを読みこませて、機械音声にすると13分18秒になります。これが演説の原稿をほぼ標準のスピードで話した場合にかかる時間になります。
これに対してこの原稿を翻訳したものを同じようにVoice Editingで機会音声にすると以下のような結果になります。
スペイン語 13分58秒
フランス語 13分12秒
中国語 15分45秒
ロシア語 15分55秒
日本語 19分48秒
ここからいろいろなことがわかります。同じヨーロッパ言語に属するスペイン語、フランス語では翻訳上で無駄なところが少ないためなのか、オリジナルと同じくらいのスピードになります。これに対して言語体系が違うというハンデなのか中国語やロシア語では若干時間がかかります。
しかし、ここで注目すべきは日本語の極端な遅さでしょう。実際に 僕自身が音声を聞いてみても日本語が極端に遅いスピードで話されているわけではありません。むしろアナウンサーより若干早いくらいのスピードで音声化されています。
それでも同じ概念を伝えるのに英語より48%、中国語より25%も時間をかけているわけです。
つまり一定の概念を表現するのに、時間をかけることが許される日本語に対して、英語などはそんなに悠長に時間をかけていられないということなのです。
だからダラダラ時間をかけて一つの概念を表現するのになれた日本人が、他の言語を操ろうとした時に、この概念を言語に組み立てるプロセスに消費できる時間が短すぎることで苦労してしまうのです。
同じアジア民族でも中国人が英語の習得に秀でているのも、中国語が比較的(というかかなり)スピードがある言語だからだと思います。
同じようにスペイン人がヨーロッパの各言語を学ぶのが結構しんどいといわれている(統計によるとドイツ人、フランス人は50%の人間が英語が話せるのにたいして、スペイン人は22%)のは、彼らの怠惰(失礼)や言語の類似性なども多少あるにしてもスペイン語が他のヨーロッパ言語にくらべて遅い言語だからではないでしょうか。
さらに追加すると、僕の周りには英語を自由にあやつる友人がいますが、彼らは往々にして日本語を話すスピードが速いです。これは日本語しか話せない人とあきらかな差があります。これは英語という速い言語を習得する課程で、頭の回転が速くなったことに起因するのではないかと思っています。
そう考えていくと、日本人にとって語学を習得する際には、語学とは別のところで頭の回転を速くする訓練、それは日本語による速読であり速聴になるわけですが、それが有効になるとも考えられます。
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